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有栖川有栖「モロッコ水晶の謎」読了。

私が本を読むのはたいてい電車内なので、本を買うのも基本的には文庫本で、たまにノベルスにも手を伸ばすって程度だったりします(「女王国の城」は例外中の例外。それほど待ち望んでいた)。

で、ついうっかり連続で有栖川を読んでしまったわけですが。
うーん、やはり「女王国」の後に読むべきではなかったな。同じ作家の手になるものであるがゆえに、はっきりと落差が見えてしまう。

もっとも、これが「スイス時計の謎」ぐらいの出来であればそこまで気にならなかったのかもしれませんが・・・なんで「モロッコ」が「ペルシャ」と並んで地雷扱いされていたのかがよくわかった・・・。

ただ、表題作「モロッコ水晶の謎」以外はそう悪くもないんだよね。「ABCキラー」の微妙に後味が悪いあたりなんか、さすがって思った。あとは掌編(小ネタ?w)の「推理合戦」。これはそもそもミステリですらないんだけど、最後の締めがいい。「ABC」とは真逆の意味で有栖川らしいw


以下「モロッコ」のネタバレ有り。ほぼ解答を書いてしまってるので要注意。






「犯人は占いを100%ガチで信じてるから、自分が毒入りジュースを口にすることは無いと本気で信じていた」

これはまぁわかる。
しかし、だからといって「明海もまた口にすることは無い」とどうして信じられるんだろう?
というのは、犯人の告白を聞いた(作家)アリスが

○○(犯人)が、ごくごくとジュースを呷っていたのを思い出す。あれも必然の行動だったのか。臆病風に吹かれて少量だけ飲めば、当たり籤を引いてしまい、苦しんだだけで生き延びるおそれがあったから。

と考えるくだりがありまして、それが当たっているのだとすれば、明海が何かの間違いで少量しかジュースを飲まないで、で、それが「当たり籤」で、苦しむだけ苦しんで生き延びてしまうって可能性もあったわけだから。

このトリック(厳密に言えば「トリック」でもなんでもないけど)で殺人を犯すなら、「3人のうち(自分以外の)ふたりのどちらが死んでもかまわない」と思っていた、という方がすっきりするかな。それで、被害者だと思われていた人が実は、予言どおり「自分は絶対死なない」ことを確信して毒を入れた本人でした(つまり予言は外れ)・・・ってオチとかね。

by exbaum | 2008-03-27 02:17 |