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有栖川有栖「女王国の城」読了。

昨日は帰宅後、ゴンゴール見て爆笑(本来笑うべきところではないんだが、あのゴールを見たら笑わざるを得まいw)したところまでは記憶があるのですが、その後不貞寝して目が覚めたらスパサカ終わってました。
いや、スパサカ自体は別に見たくもなかったのですが(なんせ不貞寝だし)「ロスタイムライフ」・・・楽しみにしてたのに・・・orz

で、そんだけ寝てしまうとさすがにもう寝れねーよ、というわけで、半分ぐらい読みかけのまま止まってた本を一気読み。やっっっっっと!読み終わったよ!!長かった・・・w

実際には長さが問題ではなくて「リズム」の問題だったのですが。1ページ目から、ちょうど私が止まってたあたりまでは、ストーリーのリズムが良くなくて、つっかえつっかえ読んでる感じだったんだけど、そのもうちょい後からはラストまで本当に一気怒涛という感じで、いやー楽しかった。長かったがゆえに、最後のページを読み終えた瞬間の爽快感といったら!

ひそかに「女王国を読み終えるまでは、うかつに本を買わない!」と心に誓っていたので(と言いつつ既に文庫本を数冊買ってしまってますが)これで大手を振って次の本を読める!という喜びもあったりしますw

いわゆる「ふたりのアリス」のうち、作家アリスは短・中編向きですが、学生アリスは長編向きですね。事件が起きた際の様々な現象から「犯人たり得る条件」を列挙してそれに当てはまらない人間を消去していき、最後に残ったひとりが真犯人である、という実にシンプルかつ美しい解法。そのプロセスのために推理小説を読んでいる、という側面は確かにある。



本格ミステリとは<最善を尽くした探偵の記録>だ。
江神二郎の推理こそ、この物語を完結させる唯一の解答である。

ここを読んだ瞬間、何故だかぞくっときた。


以下、ネタバレも含む感想。



正直言って、江神さんのあの推理に到達するまでの過程があまりにも長すぎた気がしないでもない。序盤、江神さんと再会するまでにあんなにページ数を割かなくてもいいだろうと思うし、中盤の活劇も(純粋に推理の材料を集めるための手順としては)無駄っぽい感じがする。
#後者に関しては、どうも作者「有栖川有栖」としては最終的にアリス×マリアに持っていきたいみたいなので、大木の根元越しのふたりの会話(と握手)の場面を入れたいがために、マリアをひとりで森に放置したのだろうと推測しているが。

あと、基本的にそういう分野に興味が無い人間としては、再三登場するUFOとかSETIに絡む薀蓄がうっとうしいw そういう「無駄」部分がまったく無いミステリというのもそれはそれで味気無いものだけど、今回はちょっと味付けしすぎたかな。

ただまぁ、「冗長」というなら上には上の人、上には上の作品があるので(あんこk(ry )まだ耐えられる程度の冗長さだけどね、このぐらいなら。


やたらとアリス・マリアで視点が入れ代わるのも、ちと気になった。よく見ると、各節の頭についてる番号が違うのでそれでわかるんだけど(アリス節は黒字、マリア節は白抜き)慣れるまではうまく頭が切り替わらなかった。まぁ、これもアリス×マリアの布石か。
ついでに、江神さんとの再会前にふたりで散歩してるときのアリスの妄想がおかしいw こんな男で本当にいいのかマリアww
#アリスの「性寂説」も最終作への伏線なんだろうか。


推理プロセスの条件1と条件2は納得がいくんだけど、条件3はなんか納得いかないなぁ。というか、なんでそんな面倒な真似までしてその銃を使わないといけなかったのか。現に1人目は絞殺なんだから、同様に絞殺でもいいし、「城」内の厨房からナイフや包丁を掠め取ってきてもいいし、文中にもあったとおりラジコンやら何やらを利用して外から「城」内に凶器を持ち込むことだって可能だし。その銃を使うこと自体に特別な意味があるのでなければ、こんな面倒なプロセスを踏んでまで犯行に及ぶのはちと無理がある気がする。

しかも、これは文中で犯人自身が指摘していたことでもあるけど、条件その3には確かに「女王」も該当してるんだよね。しかも、条件2も該当する。
事実としては、そもそも「女王」は「城」内にいなかったのだから、容疑者リストから除外してOKだったのだけど、それは解決後にわかったことであって、江神さんが推理している段階ではこのことはまだ伏せられていたはず。
あ、だから解決の前に江神さんと教団の人がふたりきりで話をしたのかな。「女王」のアリバイ(まさしく「現場不在証明」)を確認するために。

それにしても、犯人の動機はどうなんだろう・・・。
教団を恨みに思うのは理解できるんだけど、自らの人生の破滅と引き換えにしてまでやることなのかな、これ。例えば教祖の直系である「女王」ひとりに向くのならばまだいいんだけど、「教団」そのものという大きくてぼんやりしたものに対して、そこまで濃密な憎しみを抱けるものなんだろうか。
真犯人として指摘された後の壊れっぷりも、なんか「ステレオタイプの若者」って感じだし(作者「有栖川有栖」が既に「若者」ではないがゆえの限界なのかもしれないけど)。

正直言って「双頭の悪魔」の真犯人に比べると、色々な意味で「小者」という印象が拭えない。もちろん「月光ゲーム」の犯人の教条的なまでの愛とも、「孤島パズル」の犯人の哀しさとも相容れない。



「双頭の悪魔」で明かされた、江神二郎の「呪い」。
もちろんその呪いはいまも彼の心に根深く棲みついているのだけど、少なくともこの作品での彼は自らその呪いにとらわれるのではなく、解放への道を歩み出しているように思える。実父を探して教団までやってきたことも、その一環なのだろう。
間もなく終わる(はずの)彼の学生生活において、この時期に濃密な時間を共有するのがアリス達4人であることは、きっと彼にとって幸運なことなのだろう。呪いと改めて向き合い、乗り越えようとする力を与えてくれるのだから。

学生アリス編の長編は、予定ではあとひとつ。
願わくばそこで、作者「有栖川有栖」が江神二郎に生きるべき未来を与えんことを。


その最終作が何年先に完成するのかってのが一番心配なんだけど・・・w
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by exbaum | 2008-03-17 02:11 |